地下鉄と雨

本を開いて居眠りをしながら地下鉄に揺られているサラリーマンを、見ていた。

僕も仕事へ、一応向かう途中である。

一応というのには、理由がある。

休んでしまおうかと考えながら、地下鉄に乗っているからだ。

僕とこのサラリーマンは大きく違う。

彼は忙しい最中に居眠りをしながらも、さらに書を閉じずに、仕事へも行こうとしている。

一方の僕は、特に理由もなく、仕事から遠ざかろうとしている。

外は雨が降っている。

なんだか、水の匂いが、地下鉄を降りて、階段を登る度に強くなってきた気がする。

雨は休む理由にはなるまい。

サラリーマンがみせていた、姿からなにかを学び取るか、言い訳のような買い物をして帰ってしまうか。

どちらにしても、雨は止みそうもない。